佐々野寄の日記

数学、ソフトウェアまたはそのほか

「線形代数と量子力学」

何となく面白うそうだなと思って

数学者が書いた量子力学の本を読んでみました。

 

 

線形代数と量子力学 (基礎数学選書 24)

線形代数と量子力学 (基礎数学選書 24)

  • 作者:竹内 外史
  • 発売日: 1981/03/30
  • メディア: 単行本
 

 

数学部分もかなり面白かったです。

ユニタリ作用素、自己共役作用素と射影作用素の理論

また、指数関数などの関数への行列の代入の議論は級数の収束に

頼らないので、他の本にはないかと思います。

 

物理学部分は、

量子力学の有名な原理、不確定性原理や粒子と波動の性質、

などが前半で議論した数学を用いて説明されていきます。

 

これから、

物理学の本も読んでみようかな、と思います。

12個のたまごと天秤の問題(7) 一般化の解答

今回で答えを得ます。

 

問題

(0+-)がN個あります。1個だけ(0)でなく、残りのN-1個は(0)です。

天秤をn回まで使って(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$a_n$は

何でしょう?

 

1回目の天秤の後、

(1)  (0+)と(0-)がたくさんという状況

(2)  (0+-)がたくさんと(0)がたくさんという状況

になります。

(1)を考えていって、次の定理を得ました。

 

定理

$N$個の(0+)または(0-)があり、1個は(0)でないとする。

$n$回の天秤で(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$b_n$は

$3^n$

である。

 

(2)を考えていって、次の定理を得ました。

 

定理

(0+-)が$N$個ある。1個だけ(0)でなく、残りのN-1個は(0)。

さらに(0)が1個以上ある。

天秤をn回まで使って(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$c_n$は

$(3^n + 1)/2$

である。

 

ここまで考えたたのでできます。

大体、前回の$c_n$を求めるのと同じような感じです。

 

左:xxxx 右xxxxx  残りxxxx

とするんですが、

まずは、

釣り合ったとき、残りに(0)でないのがあります。

この状況は$b_{n-1}$なので、残りの最大数は$b_{n-1}$

です。

天秤に載せる方は、左右を合わせて$3^{n-1}$以下です。

$3^{n-1}$が奇数なのでこのまま載せることはできません。

(0)がない状況なので、$3^{n-1}-1$を半分ずつ載せるのが最大です。

 

 

よって、

左:(0+-): $(3^{n-1}-1)/2$個、 

右: (0+-): $(3^{n-1}-1)/2$個

残り $b_{n-1}=(3^{n-1}+1)/2$

とおけばよいことが分かります。

 

よって、

 

$a_n = (3^{n-1}-1)  + (3^{n-1}+1)/2 = (3^n-1)/2$

です。

 

$a_n =  (3^n-1)/2$

が答えです。

 

ここまで来て定理を得ることができました。

 

定理

(0+-)が$N$個ある。1個だけ(0)でなく、残りのN-1個は(0)。

天秤をn回まで使って(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$a_n$は

$(3^n - 1)/2$

である。

 

これで、結論を得ることができました。

 

 

最初に解こうとした$a_n$とは別に、$b_n$, $c_n$も求めることができました。

 

天秤の問題はいろいろバリエーションありますけど、

今回考えたことで、大概は解けるようになったかなと思います。

12個のたまごと天秤の問題(6)1回目釣り合うとき

天秤の問題、だんだん本質の近づいてきている感じがします。

 

まずは、問題再掲です。

 

問題

(0+-)がN個あります。1個だけ(0)でなく、残りのN-1個は(0)です。

天秤をn回まで使って(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$a_n$は

何でしょう?

 

1回目の天秤の後、

(1)  (0+)と(0-)がたくさんという状況

(2)  (0+-)がたくさんと(0)がたくさんという状況

になります。

(1)を考えていって、次の定理を得ました。

 

定理

$N$個の(0+)または(0-)があり、1個は(0)でないとする。

$n$回の天秤で(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$b_n$は

$3^n$

である。

  

じゃぁ、次は

(2)の(0+-)たくさんと(0)がある状況

を考えていきます。

 

(2)の問題

(0+-)が$N$個あります。1個だけ(0)でなく、残りのN-1個は(0)です。

さらに(0)が1個以上あります。

天秤をn回まで使って(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$c_n$は

何でしょう?

 

$n=2$を考えるところで、$c_1=2$を示しましたが、

もう一回ちゃんと書いてみましょう。

(0)が1個あるという状況です。

 

2個の(0+-)のとき

以下のように判別できます。

左 (0+-) 右 (0)  残り(0+-)

 

傾いたら左が、釣り合ったら残りが(0)でないです。

 

ここから1個増やすことはできるか?

残りを2個にすると、つりあったときに2個残ります。

なので、残りは1個でないとだめです。

天秤に載せるのを増やすとどうなるか。どちらに載せても

傾いたときに2個の(0+-)が残ってしまいます。

ということで3個の(0+-)は1回では判別できません。

 

したがって、

$c_1=2$

が分かりました。

 

漸化式の導出

 

これから$c_n$に関する漸化式を作ります。

 

左:xxxx 右xxxxx  残りxxxx

とするんですが、

まずは、

釣り合ったとき、残りに(0)でないのがあります。

この状況は$c_{n-1}$なので、残りの最大数は$c_{n-1}$

です。

天秤に載せる方は、左右を合わせて$3^{n-1}$以下です。

$3^{n-1}$が奇数なのでこのまま載せることはできません。

(0)がない状況では、$3^{n-1}-1$を半分ずつ載せるのが最大です。

いまは(0)が1個あるので1個足して、天秤に載せます。

 

左:(0+-): $(3^{n-1}+1)/2$個、 右: (0+-): $(3^{n-1}-1)/2$個、(0)1個

とすると、傾いたときに、$3^{n-1}$の(0+)、(0-)が出てきてそれが最大です。

 

よって、

左:(0+-): $(3^{n-1}+1)/2$個、 

右: (0+-): $(3^{n-1}-1)/2$個、(0)1個

残り $b_{n-1}$

とおけばよいことが分かります。

 

したがって、

$c_n = 3^{n-1} + c_{n-1}$

 

これを解いて、

$c_n = (3^n + 1)/2$

です。

 

これで、もう一個定理ができました。

 

定理

(0+-)が$N$個ある。1個だけ(0)でなく、残りのN-1個は(0)。

さらに(0)が1個以上ある。

天秤をn回まで使って(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$c_n$は

$(3^n + 1)/2$

である。

 

 

12個のたまごと天秤の問題(5) 1回目釣り合わないとき

12個のたまごの問題を考えてきました。

 

今回は、

(0+)と(0-)が合計N個あるとき$n$回の天秤で判別できる$N$の

最大個数を求めていきます。

 

1回の天秤では?

(0+)または(0-)が3個、1個だけ(0)でないのがあるとき

1回で判別可能です。

 

ここは、丁寧に見ていきましょう。3個だけなので全部書きましょう。

 

(0+)が3個のとき

左 (0+) 右 (0+)   残り (0+)

傾いたら重い方、釣り合ったら残り

(0+)が2個、(0-)が1個のとき

左 (0+) 右(0+)  残り(0-)

傾いたら重い方、釣り合ったら残り

(0+)が1個、(0-)が2個のとき

左 (0-) 右(0-)  残り(0+)

傾いたら軽い方、釣り合ったら残り

(0-)が3個のとき

左 (0-) 右 (0-)   残り (0-)

傾いたら軽い方、釣り合ったら残り

 

じゃぁ、文章にしておきます。

補題

$3$個の(0+)または(0-)があり、1個は(0)でないとき

1回の天秤で判別可能である。

 

これを一般化してみましょう。

 

補題

$3^n$個の(0+)または(0-)があり、1個は(0)でないとする。

$n$回の天秤で(0)でない1個をみつけることができる。

 

 

数学的帰納法で証明していきます。

さっき$n=1$のときは示したので、

$n=k$のとき正しいとして、$n=k+1$のときを考えます。

 

(0+)が$2\dot 3^k$以上のとき

左 (0+): $3^k$個   右 (0+): $3^k$個

と載せればよいです。

傾いたら、重い方が(0+): $3^k$個で他が(0)になるので

数学的帰納法を使えます。

釣り合ったときは、残りの$3^k$個に(0)でないのがあるので

数学的帰納法が使えます。

 

(0-)が$2\dot 3^k$以上のとき

左 (0-): $3^k$個   右 (0-): $3^k$個

と載せればよいです。

傾いたら、軽い方が(0-): $3^k$個で他が(0)になるので

数学的帰納法を使えます。

釣り合ったときは、残りの$3^k$個に(0)でないのがあるので

数学的帰納法が使えます。

 

(0+)も(0-)も$2\dot 3^k$より少ないとき

このとき、(0+)も(0-)も$3^k$個以上あります。

(0+)の個数を$p$個、(0-)の個数を$m$個とします。

左 (0+):$p-3^k$個、(0-):$m-3^k$個   右(0+):$p-3^k$個、(0-):$m-3^k$個

とします。

傾いたら重い方の$p-3^k$個と軽い方の$m-3^k$個で合計$3^k$個の

中に(0)でないのがあるので、数学的帰納法が使えます

釣り合ったときは、残りの$3^k$個に(0)でないのがあるので

数学的帰納法が使えます。

 

これで証明終わりです。

 

天秤$n$回で最大$3^n$個までしか判別できないことを思い出すと、

以下の定理が導かれます。

 

定理

$N$個の(0+)または(0-)があり、1個は(0)でないとする。

$n$回の天秤で(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$b_n$は

$3^n$である。

12個のたまごと天秤の問題(4) 問題の一般化

12個のたまごと天秤の問題4回目です。

 

今までの復習をしておきましょう。

12個のときの解法を見て、新しい記号を導入して、

12個の解法を新しい記号で書き直しました。

 

ここから、一般化していきます。

どう一般化するの?と思う人も多いでしょうけど、

まずは、3回でできるのは12個が最大ですか?

というような問から始めます。 

 

実は13個でも3回でできます。14個では3回ではどう転んでも無理です。

 

最大の個数を求めていくという問題設定を行います。

 

問題

(0+-)がN個あります。1個だけ(0)でなく、残りのN-1個は(0)です。

天秤をn回まで使って(0)でない1個を見つけることのできるNの最大数$a_n$は

何でしょう?

 

前回までに示したことは$a_3 \ge 12$です。

 

$n=2$のとき

 

$n=2$のときのことをまず考えてみましょう。

 

つまり

2回の天秤で何個判別できるか?

という話です。

 

1回目に$k$個ずつ載せるとしましょう。

傾いたとき、(0+)が$k$個、(0-)が$k$個出てきます。

あと$1$回で判定するには、この$2k$個が$3$個以下でなくてはなりません。

$2k \le 3$

だから、なので$k=1$が最大個数になります。

 

つりあったときは、残りに(0)でないのがあります。

残りが1個のときはそれが(0)でないです。

2個のときは、1回目で(0)と確定した1個と残りの一個で測ればよいです。

左 (0+-)  右(0) 残り (0)(0+-)が1個ずつ

傾いたら左、釣り合ったら残りの(0+-)が(0)でないです。

 

1回目で釣り合ったときの残りが3個のときは、

あと1回で判別することはどうやってもできません。

 

したがって、

$a_2=4$

が分かりました。

 

この$n=2$のときの思考がいろいろなことを示唆します。

 

まずは、1回の天秤の操作は、3個の情報しか得られないという事実です。

天秤と最大数について

 

無造作に天秤という言葉を使ってきましたが

天秤というものの性質をちゃんと考えておきましょう。

 

天秤というのは、1回の操作で、3通りの情報しか出せません。

「つりあっている」

「右に傾く」

「左に傾く」

です。だから、1回の操作で判別できるのは3個までです。

そして、

$n$回の操作で判別できるのは$3^n$が最大

言い方を変えると

$n$回の操作で判別できるのはどう頑張っても$3^n$以下

です。

 

最初の考察

まず、1回目の天秤を載せる前、(0+-)がたくさんあります。

釣り合ったときは、(0+-)がたくさんという状況はあまり変わりません。

ですが、釣り合わなかったときは、(0+)と(0-)がたくさんに変わります。

それ以降は(0+)と(0-)がたくさんという状況です。

 

(1)  (0+)と(0-)がたくさんという状況

(2)  (0+-)がたくさんと(0)がたくさんという状況

 

の二つの状況があることを認識しましょう。

 

 

 

次回からは、(1)の

(0+)と(0-)が合計N個あるとき$n$回の天秤で判別できる$N$の

最大個数を求めていきましょう。

12個のたまごと天秤の問題(3) 新しい記号で12個の解答

てんびんの問題の続きです。

前回導入した記号で問題と解答を書いていきます。

 

まずは記号を思い出しましょう。

 

0  : 正常の可能性がある

+ : 重い可能性がある

-  :  軽い可能性がある

 

でした。

たとえば、(0+)と書いたら、

正常の可能性と重い可能性があって軽い可能性はない

です。

書かなかったらその可能性なし

を忘れないようにしていきます。

 

問題(記号で書き換え)

(0+-)が12個あります。1個だけ(0)でなく、残りの11個は(0)です。

てんびんを3回使って(0)でない1個を見つけでください。

 

 

解答(記号で書き換え)

1回目の天秤では、(0+-)を4個ずつ載せます。

釣り合った場合と釣り合わなかった場合の場合分けです。

 

1. 1回目で釣り合った場合

ここで分かったことは、

(0+-): 4個、(0): 8個

です。

 

2回目は、

左 (0+-)(0+-)   右 (0+-)(0)    残り (0+-): 1個 、(0): 7個

 

 

(1a)2回目でつりあった場合

残りの(0+-)が(+-)となって(0)でないです。

(1b)2回目で左に傾いた場合

左は(0+)になり、右は(0-)になります。

 

(0+): 2個、(0-):1個、(0):9個

という状態です。

 

3回目は、

左 (0+)  右 (0+)     残り (0-): 1個、(0): 9個

傾いたら重い方が(+)でつりあったら残りの(0-)が(-)です。

 

(1c)2回目で右に傾いた場合

左は(0-)になり、右は(0+)になります。

 

(0-): 2個、(0+): 1個、(0):9個

という状態です。

 

3回目は、

左 (0-)  右 (0-)     残り (0+): 1個、(0): 9個

傾いたら軽い方が(-)でつりあったら残りの(0+)が(+)です。

 

 

2.1回目で釣り合わない場合

 

ここで分かったことは、

(0+): 4個、(0-): 4個、(0):4個

です。

 

2回目は、

左 (0+)(0+)(0-)   右 (0+)(0+)(0-)    残り (0-): 2個 、(0): 4個

 

 

(2a)2回目で釣り合った場合

(0-): 2個、(0):10個

になりました。

 

3回目は、

左 (0-)  右(0-)    残り (0):10個

軽い方が(-)です。

 

 

(2b)2回目で傾いた場合

右に傾いても左に傾いても、

(0+)(0+)(0-)   (0):9個

 

3回目は、

左 (0+) 右(0+)  残り (0-)、(0):9個

傾いたら重い方が(+)、釣り合ったら残りの(0-)が(-)になります。

 

この記号を導入したことによって

かなり考えやすくなったかと思います。

 

12個のたまごと天秤の問題(2) 記号の導入

前回、12個のたまとと天秤の問題を導入し、

一応の解答を書いてみました。

 

これから一般化と行きたいところですが、

わざと足踏みしてみましょう。

 

前回の解答、読みづらかったですね。

筆者も書くのが面倒でした。解答自体はすぐに出ても

書く、となると非常につらかったです。

 

なぜか?

 

 

 

言葉の問題だと思います。

用語の問題と言ってもよいです。

異常の可能性のあるたまご、重い可能性のあるたまご、

こんな長い用語を使うから読みづらい、書きづらい、

もっと言うと

変な用語は思考を邪魔します。

なので、思考を邪魔しないように数学ではいろいろな記号が出てくると考えられます。

そこにある事象そのもの、本質だけに思考を集中したいから、

だから、いろいろな記号を導入する、そう考えましょう。

 

記号の導入

さぁ、前置き長くなりましたが、記号を導入しましょう。

実はここで紹介するのとは少し違う記号で説明していました。

が、よーく考えなおして、総書き換えをやりました。

ここからが、筆者が考える最高の記号群です。(自画自賛)

 

0  : 正常の可能性がある

+ : 重い可能性がある

-  :  軽い可能性がある

 

 

とします。これらで、可能性のあるものを全部、かっこで囲んでかくという

記法を採用することにします。

 

たとえば、てんびんにのせる前は、正常の可能性、重い可能性、軽い可能性、

 すべての可能性があります。このたまごの状態を

(0+-)

と表すことにしましょう。

 

てんびんに4個ずつ載せて左にかたむいたとします。

左に載ってたやつは、正常の可能性と重い可能性があります。

これは

(0+)

です。

右に載ってたやつは

(0-)

です。

そして、忘れがちですが、載せなかったのは、

正常であることが分かったので、

(0)

と書くことにします。

(0)とかいたとき、重い可能性はなく、軽い可能性もないことも

表すことに注意しましょう。

書かなかったらその可能性なし

です。

 

次回は、

この記号になれるために、1回目で文章だけでがりがり

書いた問題と解答を書きなおしてみましょう。