佐々野寄の日記

数学、ソフトウェアまたはそのほか

三角関数加法定理(6) 関数方程式

問題再掲です。

(1) 一般角$\theta$に対して$\sin\theta$, $\cos\theta$の定義を述べよ。
(2) (1)で述べた定義に基づき、一般角$\alpha$, $\beta$に対して
\begin{eqnarray}
\sin(\alpha + \beta) &&= \sin\alpha\cos\beta + \cos\alpha\sin\beta \\
\cos(\alpha + \beta) &&= \cos\alpha\cos\beta - \sin\alpha\cos\beta
\end{eqnarray}

を証明せよ。

 

三角関数の加法定理の証明です。

前々回、前回で冪級数微分方程式による三角関数の定義を行いました。

もう単位円とかきれいに忘れた格好です。

 

では、最後にとっておきの方法です。

この方法は誰も思いつかないでしょう。

加法定理そのものを満たす関数を$\cos x, \sin x$と定義します。

 

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①②をみたす関数を定義とするわけなので(2)は明らかです。

 

なんか定義して示せ、と言われているのに、

示すべきものを満たすものっていう定義にするとか、

なんという狂気な解答!すごいでしょ!?

 

①②だけでは一意性は言えないので、③④を付け加えています。

イデアは①②③④から前回の微分方程式と初期値をみたすことを言って

微分方程式の解の存在と一意性に帰着するというものです。

③④は、私が考えた条件ですが、、、、

もっとイケてる条件があったら教えてください。

(自分的には不満です)

 

証明のアイデア

  • 初期値をみたすこと $c(0)=1, s(0)=0$
  • 微分方程式を満たすこと

を示していくということです。

 

微分方程式を満たすこと、つまり

微分係数を求めないといけません。

 

高校の教科書を思い出してみましょう。このために④は不可欠です。

あと、差積の公式を出す必要があります。そのためには、

$x-y$の式を出さないといけません、、

このために考えた条件が③です。

③はピュタゴラスの定理なので不自然ではありませんが、

なんだかイケてないと感じてしまいます。。

 

何はともあれ、アイデアは以上の通り。

証明は長いですが、難しいところはありません。

 

初期値

よくある関数方程式から初期値を求める感じで。

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$-x$の公式

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加法定理の差の公式

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差積の公式

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微分

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以上で、微分方程式の初期値問題の解の存在と一意性から

①②③④をみたす$c(x), s(x)$は存在し一意です。