佐々野寄の日記

数学、ソフトウェアまたはそのほか

三角関数加法定理(7) 蛇足的考察

三角関数を定義して加法定理を証明する。

 

これは高校数学でありながら深淵な数学をのぞかせてくれました。

 

(2)の教科書的方法はさておき、それ以外の方法を考察してみましょう。

 

(3)回転行列の方法

複素数を使う方法でも同じですが、循環論法になりそうな感じです。

線形性を前面に出して、循環論法を避けた証明です。

ここから線形代数の抽象的な考え方、線形性とか基底とかの

考え方が垣間見えます。

(4)Eulerの公式 (5)微分方程式

この二つの方法は、かなりよく知られています。

微分方程式の本とか複素解析の本とか探せば載っています。

 

実は、高校的な三角関数の定義は循環論法ではないか問題を抱えています。

 

問. 円周率を円周と直径の比で定義するとき円の面積は?

を答えることを考えましょう。どうやって解きますか?

 

ふつうは積分するでしょう。積分するには微分を考えないといけないです。

そうすると\lim_{h\to 0}\sin x / x$を求めないと、でもそのとき

円の面積を使うよね。あれ? 

円の面積の公式を求めるために円の面積の公式を使っている

これが循環論法だというのです。

 

この議論を回避する一つの方法として、冪級数三角関数を定義したり

微分方程式の解として三角関数を定義するのです。

 

ここからは、複素解析の世界が拓けます。

微分可能とか級数展開かのうとかいろいろが同値で

高木貞治先生が言う玲瓏なる境地が広がっています。

 

(6)関数方程式

ここから進むべき深淵な数学はありません。

 

でも、こういう定理を考えようとしたことが数学です。

加法定理①②に条件③④を加えなければなりませんが、

どういう条件なら成り立つか、

もっと弱い条件では?もっと強いイケてる条件は?

を考えた結果がこの③④なのです。

これこそが数学の定理だと思いませんか?

 

少しでも面白そうだと思ってもらえると幸甚です。