恒等式の問題(5) 割り算の解法
問題再掲です。
以下の問題の解法をいろいろ考えてみようというやつの第5弾です。
今日で最後の予定です。お付き合いくださってありがとうございます。
第1回で、簡単とした解法です。
問題
$$
x^3=a(x-1)^3+b(x-1)^2+c(x-1)+d
$$
が$x$に関する恒等式となるように定数$a,b,c,d$を求めよ。
今度は、剰余の定理をもっと深く考えていきましょう。
$P(x)=x^3$とおくとき、
$d$が$P(1)$であることは剰余の定理そのものです。
これを拡張することはできないかと考えてみましょう。
$$P(x)=(x-1)Q_1(x)+P(1)$$
です。$Q_1(x)$を$(x-1)$で割ることを考えます。
$$Q_1(x)=(x-1)Q_2(x)+Q_1(1)$$
これを最初の$P(x)=(x-1)Q_1(x)+P(1)$に代入すると、
$$P(x)=(x-1)^2Q_2(x)+Q_1(1)(x-1)+P(1)$$
となります。
ということで、$Q_3(x), Q_4(x)$も定義することによって、
$$P(x)=Q_4(1)(x-1)^3+Q_3(1)(x-1)^2+Q_2(1)(x-1)+P(1)$$
したがって、
- $P(1)$は$P(x)$を$(x-1)$で割った余りです
- $Q(1)$は$P(x)$を$(x-1)$で割った商を$(x-1)$で割った余りです。
これを繰り返すこと、つまり、$(x-1)$でどんどん割っていけば
答えが得られます。
組み立て除法を繰り返せば答えが得られる。
という謎がこれで解けました。
解法的にはこれが一番簡単でしょう。
いろいろな解法を通じて「数学」を学ぶことができました。
(1)(2)(3)で、どんな値を代入しても同じであることと
係数がすべて同じであることが同値であることを示しました。
これによって、式を「もの」と見る視点が育まれます。
(4)においては微分法の解答です。Taylor展開につながる考え方です。
そして、今回(5)によって、割り算の原理による解法です。
割り算することがほぼ同じであるので、とても自然です。
$1, x, x^2, x^3, ...$と$1, (x-1), (x-1)^2, (x-1)^3, ...$の
基底の変換(の一部)を与えるとみることができます。
実は、この恒等式の問題はとても豊かな数学の考え方がつまっていました。
楽しむことができましたか?