三角関数加法定理(4) Eulerの公式を使う
問題再掲です。
(1) 一般角$\theta$に対して$\sin\theta$, $\cos\theta$の定義を述べよ。
(2) (1)で述べた定義に基づき、一般角$\alpha$, $\beta$に対して
\begin{eqnarray}
\sin(\alpha + \beta) &&= \sin\alpha\cos\beta + \cos\alpha\sin\beta \\
\cos(\alpha + \beta) &&= \cos\alpha\cos\beta - \sin\alpha\cos\beta
\end{eqnarray}
を証明せよ。
三角関数の加法定理の証明です。
ここからは高校数学を逸脱します。でも、この辺りから楽しいです。
Euler(オイラー)の公式と指数法則を使うとすぐに証明できます。
Eulerの公式
$$e^{iz} = \cos z + i\sin z$$
指数法則
$$e^z e^w = e^{z+w}$$
Enlerの公式と指数法則を用いた証明
まずは、加法定理を示すところからやってみます。
定義を変える 冪級数による三角関数の定義
さて、Eulerの公式と指数法則を証明しないと、という気になります。
(1)の解答、単位円周上の点の座標としたことを思い出しましょう。
単位円周上の点の座標を三角関数の定義からこれらを示すことって
できるんでしたっけ?
ここで、三角関数の定義を元の「円周上の点の座標」から
「ある冪級数」として定義します。
もともと三角関数は「斜辺分のなんとか」で定義していました。
(三角比と呼ばれていたやつです)
「斜辺分のなんとか」のときは、$0$から$\frac{\pi}{2}$までの範囲
までしか定義できませんでした。
そして$0$から$\frac{\pi}{2}$のとき、単位円の円周上
の座標が$(\cos\theta, \sin\theta)$であることを利用して、全実数に広げました。
定義 ⇒ 性質1
となったとき、性質1を定義にしてしまおう、ということです。
数学ではこのようなことをよくやります。
「特徴づけ」characterization, justificationと言ったりして
ある定義を特徴づける定理というのは文句なしに良い定理になります。
「斜辺分のなんとか」
⇒「単位円上の点の座標」
⇒「ある冪級数」
に定義を拡大させることができました。
ここから、Eulerの公式と指数法則を示すことができます。
Eulerの公式の証明
指数法則の証明
これで証明が完了します。
入試問題でこの解答を書ける人はそういないと思いますが、
・級数による定義
・Eulerの公式、指数法則の証明
・加法定理の証明
と書けば完全正解です。