恒等式の問題(4) 微分法の解法
問題再掲です。
以下の問題の解法をいろいろ考えてみようというやつの第4弾です。
問題
$$
x^3=a(x-1)^3+b(x-1)^2+c(x-1)+d
$$
が$x$に関する恒等式となるように定数$a,b,c,d$を求めよ。
前回は、説明がうまくできたかどうか不安です。。。。
今日は微分法による解法を考えます。
$x=1$を代入すれば$d$が出る。じゃぁ、微分してまた$x=1$を入れれば
$c$が出る、というアイデアです。
これって何度も微分して$x=1$を代入しているだけです。
$f(1), f'(1), f''(1), f'''(1)$を求めているだけですね。
これはTaylor展開を思い出しませんか?
$x=1$のTaylor展開を書いてみましょう。
$$f(x)=f(1)+f'(1)(x-1)+\frac{f''(1)}{2!}(x-1)^2+\frac{f'''(1)}{3!}(x-1)^3+\cdots$$
が成立します。
これをダイレクトに使った解法もできます。
$f(x)=x^3$と置くんですが、$3$次より大きい項は$0$になるので
以下のように簡単です。
今回の解法はかなり簡単でした。
気にしないでください。
恒等式の問題(3) 係数比較法の正しさ
問題再掲です。
以下の問題の解法をいろいろ考えてみようというやつの第3弾です。
問題
$$
x^3=a(x-1)^3+b(x-1)^2+c(x-1)+d
$$
が$x$に関する恒等式となるように定数$a,b,c,d$を求めよ。
さてさて、次の解法に行く前に、ちょっと立ち止まって、
係数比較法に関して考察してみます。
係数比較法は正しいのか?
係数比較法は正しいでしょうか?
つまり、
どんな数を代入しても正しい等式は係数がすべて一致する
という主張は正しいですか?
教科書は、ほとんど当たり前のように扱っています。
この記事を書くためにyoutubeとか見ましたけど、
この事実を証明しているものはありませんでした。
証明できますか?
まずは、示すべきことをはっきりと書いてみましょう。
定理1
$P(x)=\sum_{i=0}^m p_ix^i$, $Q(x)=\sum_{j=0}^n q_jx^j$とおくとき、 $P(x)=Q(x)$が恒等式(任意の実数について$P(x)=Q(x)$が成立する)ならば、$m=n$が成立して、任意の $i=0$,$1$, ,$m$ に対して $p_i=q_i$が成立する。
定理のように主張(証明すべき事)をちゃんと書けるということは、それだけでとても数学できるということになります。多分、高校生は書けないでしょう。普通の理系の大学生でも難しいかもしれません。
さて、もう少し簡単にならないだろうかと考えます。
$2$次式で考えてみましょう。
定理は以下のように書けます。
$$p_2x^2 + p_1x + p_0 = q_2x^2 + q_1x+q_0$$
が任意の$x$について成立するならば、$p_2=q_2, p_1=q_1, p_0=q_0$
が成立する。
変形してみましょう。
$$(p_2-q_2)x^2+(p_1-q_1)x+(p_0-q_0)=0$$
が任意の$x$について成立するならば、$p_2-q_2=p_1-q_1=p_0-q_0=0$
が成立する。
これは、以下と同じことを言っています。
$$a_2x^2 + a_1x+a_0=0$$
が任意の$x$について成立するならば$a_2=a_1=a_0=0$
が成立する。
今は、$2$次式でやりましたが、本質的に次数を使っていません。
上記の定理1は以下と同じです。
定理1(言い換え)
$S(x)=\sum_{i=0}^m a_ix^i$とおくとき、
$$S(x)=0$$が恒等式(任意の実数について$S(x)=0$が成立する)ならば、任意の $i=0$,$1$, ,$m$ に対して $a_i=0$が成立する。
だんだん、間延びしてきた感じがします。
一気に証明を書いてみましょうか。。
最後のはVandermondeの行列式と呼ばれているものです。さぁ、あと一息。
これで、証明が完了しました。
こんなに難しく考えないとできないのか?。。多分、ないと思います。
(あったら教えてください)
ということで、何を示せたかというと、
恒等式(任意の数を入れて正しい)と係数比較は同値
です。
結局のところ$0=0$という自明な式しか許さない
という事実を突きつけます。
ここから、式をものとして扱う概念の萌芽を
読み取ることができます。
高校のこの段階では、式は変数を代入してナンボの世界です。
ですが、この辺りから、多項式をモノとして扱いだします。
操作をモノとして扱う現代数学の考え方を潜ませているのです。
ことが分かりました。
恒等式の問題(2) 係数比較法
問題再掲です。
以下の問題の解法をいろいろ考えてみようというやつの第2弾です。
問題
$$
x^3=a(x-1)^3+b(x-1)^2+c(x-1)+d
$$
が$x$に関する恒等式となるように定数$a,b,c,d$を求めよ。
1回目では、代入法をやりました。
次に紹介する方法は、
教科書に次に載っている方法、それは係数比較法と呼ばれているものです。
曰く、
恒等式においては、各係数が一致する
この主張は、
$x^3$の係数、$x^2$の係数、$x$の係数、定数がすべて一致する
です。
これを使って解いてみましょう。
右辺を展開して係数比較。そこから出てきた式で連立方程式を解いて答えを導きます。
解法2 係数比較法その1
若干ですが、代入法よりも解き方が易しかったかもしれないです。
余談ですが、
実は、係数比較法には次のようにやるともっと簡単になります。
$y=x-1$とおきます。つまり$x=y+1$を元の式に代入してみましょう。
そいて左辺を展開して係数比較です。
解法3 係数比較法その2
さて、おそらく、ここまでが教科書に書いてある方法です。
これ以上、何をやることあるかどうか、というところですが、
まぁ、ちょっと考えていきます。
ずっとやりかたっとことをやりなさい(1)
こういう本を買ってみました。
なんとなく運命を感じて買ってみました。
会社を引退した人のために書かれています。
私は、まだ、引退はしていないのですがね。
運命の一冊ですから、そういうことは気にしません。
すごくいい本です。
以下のことをやりながら、自分のやりたかったことをやっていこうということです。
- モーニングページ
- アーティストデート
- ソロウォーキング
- メモワール
まずは、モーニングページ。
毎日朝起きたらそのまま何かを書く
それだけしか指針がありません。愚痴を書こうが
小説の一節を書こうが、思いついたアイデアを書こうが、
「書くことない」とずっと書いてもいい、、
何がいいのか、という気持ちになりますが、、、
やってみると心が洗われる感じがします。
それ以外は、、まだやっていないので、またの機会に紹介します。
恒等式の問題(1) まずは問題と代入法
恒等式の問題から始める数学の考え方
と題して、記事を始めてみます。どのくらい書けるか今のところ不安ですが、
とりあえず書き始めてみます。
問題
まずは、問題です。
$$
x^3=a(x-1)^3+b(x-1)^2+c(x-1)+d
$$
が$x$に関する恒等式となるように定数$a,b,c,d$を求めよ。
以下の組み立て除法をくりかえす解法Xが私の知る一番簡単に解ける方法です。
まぁ、そんな解法はずっと後にやります。いまは基本からたちかえってみるのです。
解法X
まずは、教科書に書いてあるだろうことから始めます。
恒等式の定義
恒等式とは何か。定義は覚えていますか?
思い出しましょう。初めての人、忘れている人は、以下を見てみましょう
定義
多項式$P(x),Q(x)$に対して、
$P(x)=Q(x)$が恒等式とは、
$P(x)=Q(x)$が$x$に任意の実数を代入しても成立することを言う。
「任意の」という言葉は何を指すのか、というと、$x$に何を代入しても
$P(x)=Q(x)$が成立することを言います。
つまり、$x=1, 2, 3, \dots$を代入しても$P(x)=Q(x)$が成立します。
$P(1)=Q(1)$,
$P(2)=Q(2)$,
$P(3)=Q(3)$, $\dots$がなりたつ。
もちろん、正の整数だけでなく、負の数、分数、無理数などあらゆる実数を代入しても成り立ちます。
$P(-1)=Q(-1)$,
$P(\frac12)=Q(\frac12)$,
$P(\sqrt{2})=Q(\sqrt{2})$, $\dots$が成り立つのです。
では、これを利用して問題を解いてみましょう。
定義がこれだと言っているんだからこれで解いてみるのは初手として何も間違っていないでしょう。
$X=1,2,3,-1$を代入して連立方程式ができるので、それを解けばよいです。
解法1(代入法)
この解法が、いちばん計算しているでしょう。
これから、この問題の他の解法を見つつ、そこに潜む数学を説明していきます。